SSブログ

第五問までのお話 [イェルクッシェ]

 リヴリー達の結論を聞き、大臣は少し考えた後、さもありなむといった表情で椅子にどっかり腰掛けました。そうして額をぬぐうと近衛兵の一人に何かを言付けました。

 四匹は謎を解いた達成感に跳ね回って喜んでいましので新しくやってきた者に気付くのが遅れました。

 「カシム、頼まれてくれるな。」
 「はい、父上。」
 少年は幼さの抜け切れていない灰色の瞳を真っ直ぐ向けました。
頭には父と同じ様なターバンを巻き、大臣の息子と言うには地味な服装をしていました。

 ようやくカシムに気付いた四匹はそろってご挨拶をしました。カシムは初めて目にする生き物に驚き、興味の視線を向けながら挨拶を返しました。
 所が大臣はそんな事をしている暇などないとばかりの視線でカシムを睨みました。カシムが父に礼をしてその場を立ち去ろうとした時でした。

 イェルクッシェが勇んで言ったのです。
 「ポイトコナくん!トネビンジャーの出番だよ!」

 トネビンジャーとは自称ヒーローチームの事で、この二匹だけしかいませんでした。
 ほんとうはトビネンジャーのはずだったのですがイェルクッシェがトビネの事をトネビと覚えてしまっていたからでした。
 「うん!王様を助けよう!」ポイトコナも大きく頷きました。
 ノドも盛り上がる二匹を見て小さく頷きました。
 「僕も行きます!仲間に入れてください!」
すると二匹は顔を見合わせ、同時に「うん!」と頷きました。

 「でもイェルクッシェくん?トネビンジャーだとノド君が入れないからリヴレンジャーにしようよ!」
 「そっかぁ~じゃぁそれにしよう!」
 
 そんな三匹に大臣は大きな声を上げました。
 「お前たちちびすけが行ってどうなると言うのだ。暗号を解いた事には礼を言うし褒美も出そう、しかしここから先は城の仕事だ。」
 そんな言葉も聞かずに何やらもそもそ話し合っていた三匹は納得したように頷き合うと突然一列に並んで叫びました。

 「一つ!瞳を輝かせ!」
 「二つ!不思議を追い求め!」
 「三つ!未知への探求者!」
 一匹ずつポーズをとりながらそう叫んだ後声を揃えて言いました。
 「わんぱく戦隊!リヴレンジャー!!」
 勢いに押されたのかつい乗ってしまったのか、でぴぴがクラッカーの術を使って盛り上げました。

 戦隊物を知らない大臣はふざけていると思い顔を真っ赤にしましたがカシムは小さくくくっと笑みをこぼしました。

 「決まったね!」
 イェルクッシェは言いましたがポイトコナとノドはイェルクッシェくんトビネンジャーって言いかけたでしょうと注意しました。

 大臣はそんな事は関係なく大きな声で言いました。
 「子供の出る幕ではない、ましてやリヴリーなど!」
 するとイェルクッシェはすましたお顔で言いました。
 「カシム君だって子供だよ?。それにお海苔のかかったお船なんだぁ!」
 「それを言うなら寄りかかった船だよ?イェルクッシェ君。」
 ポイトコナがそう訂正しましたがノドは「どっちも違うと思いますよ?」とぼやきました。

 「父上、この者共は追いやっても引く事はしませんでしょう。それに、聞けば難解な暗号を解読したそうではありませんか。この小さな体も連れて行けば何かの役に立つやも知れません。」
 「カシムよ、こ奴等には飼い主がおるのだ。危険な真似はさせられぬ。子供を守るも大人の役目ぞ。」
 「カシム君だって子供じゃないか~!助けに行かせようとしているんでしょ?!」
ポイトコナが飛び上がって言いました。
 「僕達はポケットの中に隠れる事も出来ます。きっとお役に立ちますよ。」
ノドは嘴をきらりと輝かせました。
 「私も面白そうだからついてくわ。」
でぴぴもお耳をぱたぱたさせて言いました。

 「父上、この子達は危なくなれば一瞬で逃げる事も出来るそうではないですか。一つ知恵を借りるつもりで連れてゆきたいのですが。」
 大臣がお髭をいじっている間、三匹はかわるがわるいろいろな事を言いました。

 「イェルクッシェ君も何かいいなよ!」
ポイトコナが振り返るとそこには誰もいませんでした。
あれ?と小首をかしげると離れた所から声がしました。
 「あれぇ?皆そこで何してるの?」
カシムの頭の上でした。皆が問答している間によじ登っていたのです。
 「何しているって・・君こそ何をしているのですか?」
ノドがいつもよりも首を伸ばして見上げました。
 「だって、出発なんでしょ?トネビン・・リヴレンジャー出動!」
そういってオーケストラで使うような鈴のたくさんついた棒を振りました。
 頭上でシャンシャンならされたカシムはそうしなくてはいけないような気になって他のリヴリーを両手ですくい、イェルクッシェのもとへ運びました。

 「父上、この子達は国王陛下が誘拐された事を知っています。」
その時それを知らなかったでぴぴは「そうなの?」と皆を見回しました。
  カシムは大臣に真っ直ぐ向き、続けました。
「この子達が他所で国王陛下のご不在をふれまわりでもしたらそれこそ暗号での伝達の意味がなくなります。他国の間者の耳にでも入れば、これぞ機とばかりによからぬ計らいを企てる国もあるやも知れませんぬ。」
 カシムの言葉に大臣は何も言えなくなってしまいました。
リヴリー達が勝手に思いこんだように、カシムは国王救出の命を受けたばかりなのです。
そしてその理由は兵を動かせば国の一大事だと公言しているようなものだからでした。目立たずに事を運ぶ必要があったのです。

 リヴリー達は難しいお話なんてあまり好きではありませんでしたが邪魔をしないようにお互い人指し指を立てて黙っていました。
 
 「ううむ、よかろう。但し、決してヤガーに知られてはならぬ。」
 「心得ました。」
カシムは頭を下げました。体が大きくて落ちそうになったノドを三匹が支えました。

 部屋を出てゆくカシムに大臣はもう一度声を掛けました。
 「カシムよ、世話をかける。」
 カシムは振り向き、そして微かにお辞儀をしました。そして扉を閉めると小さな声で言いました。
 「私も大臣の息子なのです。国を愛しているのです。」
表情を引き締めかけた時、カシムの視界に何かがおりました。イェルクッシェでした。尻尾で器用にターバンを掴んでカシムの鼻先にぶら下がったのです。
 「早く王様探しに行こうよ!僕、お海苔ぱらぱらなんだからぁ!」
 事の重大さも分からず無邪気な正義感を燃やしているイェルクッシェにカシムはリヴリー達が暗号を解いてしまった事が彼らに災いにならなければ良いと思いました。
 「分かったよ、でも向かうのは森じゃない、まず北の山に向かう。そこで知恵を借りなければならない。森の塔に住むのはあまり良い噂を聞かない魔女なんだ。魔女には魔女、ヤガーは貢物次第で力を貸してくれるからね。」


2009-09-14 01:45  nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:LivlyIsland

nice! 2

コメント 2

takehiko

ノド:うんうん^^
この時初めてボクはリヴレンジャーに入れてもらったんだよねっ!
すっごくうれしかったなぁ!
かっこいいポーズも随分練習したんだよ?

ボクの大好きなカシムくんも遂に登場だね^^
カシムくんもおっきくなったら
お父さんの大臣みたいなおひげになるのかなぁ?

by takehiko (2009-09-15 19:23) 

xephon

イェルクッシェ:カシム君は子供なのにあんまり子供みたいに遊ばないねぇ・・もっと遊んでほしかったんだけどなぁ。

カシムクンのお父さんのおひげはおもろかったねぇ!僕あそこにぶら下がってみたいなぁ。でもそんなことしたらきっとおこられちゃうよね。

・・・すこしくらいやちゃだめかなぁ?
by xephon (2009-09-16 00:02) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証: 下の画像に表示されている文字を入力してください。

 
なぞなぞ第四問解答なぞなぞ第五問 ブログトップ

このブログの更新情報が届きます

すでにブログをお持ちの方は[こちら]


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。